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ブルドッグの顔からしわが消える?
ルックス至上主義から・健康第一主義へ

イヌの免疫力を低下させている大きな原因は、次の4つというのが定説だ。

1) 近親交配
2) 環境汚染
3) ワクチン
4) フード

どの原因も、話すと長くなるので、いずれ少しずつ紹介するつもりだけれど、今回は、近親交配。

先日、時事通信がロンドン発の情報として
「ブルドッグ、あの顔立ちが消える?=有力愛犬団体が繁殖基準改正ー英」という短いニュースを流した。
これは大げさに言うと、イヌの歴史上かなりエポックメーキングな出来事として、後の世に語り継がれることになるかもしれないほどのニュースだ(と思う)。


以下は、その記事の引用。

【ロンドン14日時事】英国でさまざまな犬の体形や顔立ちが変わろうとしている。「ブリーダーが近親交配によって犬の姿を変形させ、不健康な犬を繁殖させている」との批判に応え、同国の代表的な愛犬団体ケネル・クラブが209犬種の繁殖基準を改正したためで、人気のブルドッグも今後、大きくしわの寄ったあごが見られなくなるなど本来の姿を取り戻すことになる。14日付のタイムズなど一部英紙が報じた。
 BBCは昨年夏、犬の繁殖方法の問題点を扱ったドキュメンタリー番組を放映。この中で、「ブリーダーたちはコンテストで優勝できるように、数十年にわたり無理な近親交配を重ね、がんやてんかんなどを発症する犬が少なくない」などと批判。大きな反響を巻き起こした。
 この基準改正を受け、ブルドッグは小さく引き締まった顔、長めの脚、細い胴体と、現在からは想像できない姿に生まれ変わる。
 しかし、ブリーダーの協議会は「ブルドッグが全く別の犬になってしまう」と反発、同クラブを相手取り法的措置も辞さない構えだ。


というわけで、そのブルドッグのビフォー&アフターがこれだ。


引き締まった顔、長めの脚、細い胴体の近い将来のブルドッグ?
Photo arrangement and © : 10hoho


イギリスのThe Kennel Clubは、言わずと知れた純血犬の総本山。
この総本山が、従来のルックス至上主義から、健康第一主義に宗旨替えを発表したのだ。

そもそも現代のイヌたちがことごとくがんなどの病気で死んでいくというのは、繁殖の選別基準が健康や気質、作業能力を差し置いて、外観重視になっているからだ。

ドッグショーでチャンピオンになるためには、限りなく各犬種のスタンダードに近いイヌが有利だ。
その犬種のスタンダードに適合したイヌを作出するためには、時々出現する“理想”のルックスを備えたイヌの、極端な近親交配の繰り返しが手っ取り早い。

しかし、近親交配は遺伝的疾患を増加させる。

たとえば、イングリッシュ・コッカー・スパニエルやスプリンガー・スパニエルの激怒症候群、ボクサーの心臓病、フラット・コーテッド・レトリーバーの腫瘍、ラブラドールや大型犬に多い股関節形成障害、プードルのてんかん、その他、難聴、盲目、血友病など、特定の純血種に多い疾患はすべて近親交配に起因する遺伝的疾患と考えられている。

その点、ミックス/雑種(イギリスでは混血と呼ぶらしい)は、血縁関係にない両親が同じ悪質な遺伝子を持っている確率が低く、遺伝子型の多様性が保持されるので、比較的健康なイヌが多い。

この辺の事情は、スティーブン・ブディアンスキー著【犬の科学】
(築地書館)
に詳しい。
(右の“My Favorite Books”をチェックのこと)


で、Kennel Clubは2009年3月1日をもって、母と息子、父と娘、兄弟と姉妹を両親とするパピーの登録は受け付けないそうだ。
そして、ドッグ・ショーの判定基準に健康と気質を加えるとも言っている。


なにを今さらと思うかもしれないが、これが歴史のチェンジ前の現実なのだ。


今回、Kennel Clubが近親の繁殖を禁止するために厳しい新しい規則を導入し、外見重視から遺伝的多様性路線への大転換を発表し、異系交配を推奨したことは、純血種が健康で幸せな一生をおくることへのとりあえずの第一歩として、高く評価したい。

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2009年01月19日 04:03に投稿されたエントリーのページです。

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